暮らしと創作、そして住まいを支える火
茅葺き屋根を燻し、家を長持ちさせる炎の力。地場の新鮮な食材の滋味を引き出し、仲間と囲む囲炉裏の愉しみ。土と炎から生み出される器をつくる作家の暮らしを山里に訪ねた。
薪がはぜる音とともに、自在鉤に吊るされた鉄瓶が火に呑み込まれる。囲炉裏から立ち昇る煙は小屋裏へと届き、茅葺きの屋根を燻す。防虫や防腐の効能により、茅を長持ちさせる煙。古来より人は、火の力を借りて家屋を保ってきた。しかし火は、人の営みを支える一方、時には牙を剥きすべてを焼き尽くす。古代の人は恩恵と同時におそれも抱いていたと、この家の主は言う。
京都府の中部、丹波。京都市内から車を走らせること1時間、晩秋に訪れた山間の土地は、ソバの白い花が一面に咲き乱れていた。木立の間に見え隠れする茅葺き民家が、「独華陶邑(どっかとうゆう)」を主宰する、陶芸家の石井直人さんの工房兼自邸だ。修業で各地を転々とした後、この丹波に居を構えたのは、およそ20年前のことである。
「ここに、登り窯を建てたかったんです」
所在地:京都府
家族構成:夫婦
敷地面積:1959.00㎡
延床面積:235.77㎡(1階176.90㎡ 2階58.87㎡)
竣工:1995年
設計:安田勝美建築研究所(安田勝美)
施工:鶴ヶ岡建築+島村葭商店
構造形式:木造2階建て
主な外部仕上げ
屋根=茅葺き
外壁=小舞下地土塗り壁
主な内部仕上げ
天井=杉(厚12㎜)、土塗り仕上げ
壁=小舞下地土塗り壁
床=カラマツ(厚18㎜)