古き良き歴史を受け継ぎながら、職住一体の町家暮らし
繁華街の喧噪から離れた、京都市北部の静かなまち。「織屋建て」と呼ばれる町家では、かつて職住一体の暮らしが営まれていた。そんな往事の趣そのままに、子育てをしながら和花の店「みたて」を営む、西山隼人さん夫妻の町家暮らしを訪ねました。
花に見え隠れするように立ち働くのは、1歳になる万作君をおぶった西山美華さんだ。かつておくどさんがあった通り庭では、蒸籠や土鍋からゆったりと湯気が立ち昇る。「ごはん時、お店にお客さまがいらっしゃると食事のにおいがするって言われることも。けれども私たち、お店で花を買ってもらうだけではなく、暮らしの気配も感じてほしいんです」。
それまでは住まいも職場も賑やかな市南部にあった、西山隼人さんと美華さん夫妻。新たに店を構えるにあたって探したのは、市北部の古い町家。「扱いたいのは、野山に四季 折々に咲く花たち。移りゆく四季の一瞬を封じ込めた草花は、自然からの贈り物です。なので温室で育てられた園芸種ではなく、必然的に山野草や茶花……日本の草花が主になるのです」と、隼人さん。市北部は南に比べ賑わいは劣るもの、茶道の稽古場が多く茶花の需要が多い。そして、「こうした和花を見てもらう背景となるべき空間は、やはり日本ならではの古い建物で、と考えました」。