雑誌「チルチンびと」72号掲載「京都府/デイビス邸」
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29ロンに入ると、目に飛び込んで来るのは、黒光りする骨太な古材たち。これらは、島村葭よし商店(滋賀県)から取り寄せた古材。時間が磨いた丸みのあるやさしい空気感を醸し出す。建具も同店の古建具を入れ、まるでかつて別の地に建っていた古民家が蘇ったようだ。 一方、玄関廊下の右手、家族が過ごすリビング・ダイニングとキッチンは、一転して「洋」の雰囲気。カナダから取り寄せたキッチンが据えられ、棚にもアメリカ製の小物が並ぶ。現しの構造材には古材が用いられ、中心に建つ「恵比寿柱」と洋風のしつらえの対比はユニークだ。 改修にあたって、ほとんどもとの家の間取りを変えなかった。「この地域では伝統的に接客と家族の空間を分けていたんですね。そういう文化を持った家なので、それを受け継ぎました」と木下さんは話す。時間がつくり出すアート アメリカでの学生時代に文化人類学を専攻したジョナサンさんは、「改修テーマは『古・今・東・西』」と話す。言葉通り、古いものと新しい右上から時計回りに /アメリカ製キッチン。 /アメリカで買ったキッチン用品。 /和子さんが絵を描いた時計。 /出窓はペアガラスで暖かい。右/アメリカ・コネティカット州でつくられた時計。 /玄関廊下を見通す。/玄関から外を見る。敷石は改修前のものをそのまま使っている。中央に見える古材の「恵比寿柱」はかつて別の古民家の台所にあったもの。木下さんは古材の「記憶」を大切に使用する場所を考える。

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