75車箪笥・階段箪笥箪笥のルーツでもある車箪笥。そして2階建ての建物が発達してきた江戸中期から幕末にかけて普及した階段箪笥。これは家具というよりも住宅の階段兼収納として造り付けられていたもの。車箪笥、階段箪笥ともにインパクトのある形から、インテリア空間を決定づける家具として、玄関やリビングにもお似合いです。山本明弘さんに教わる 和箪笥の心得和箪笥が求められる理由 最近和箪笥を求められる方がとみに多く、入荷数が追いつかないほどです。 日本の手仕事が見直されてきているということもありますが、その魅力は何といっても現代にはないデザインと、そこに施されている緻密な職人技。それを若い人は新鮮に、ご年配の方は懐かしく感じるようです。それに、やはり日本人として本能的に古来の伝統に惹かれるところもあるのではないでしょうか。そもそも箪笥の成り立ちが、私たちの生活文化と密接にかかわっていますから。 庶民の暮らしと 箪笥の成り立ち 箪笥の歴史は意外に浅く、普及したのは江戸時代中期頃です。それまでの庶民の住宅は寝殿造りの名残で仕切りの壁がなく、一つの部屋で寝食をしていました。ほとんど家財もなく収納の①前檜・杉材時代車箪笥②幅138×奥行き45×高さ84(㎝)③235,000円④江戸中期~後期/山形⑤車箪笥は下部の左右裏表に付いている丸カンに紐を通して、コロコロ転がして移動させていた。通常の奥行きは75㎝から90㎝ほどだが、この箪笥は途中で浅く加工されたものと思われる。引戸を開けると引き出しが。①前欅材鍵付時代車箪笥②幅100×奥行き50×高さ104(㎝)③298,000円④江戸後期~明治初期/三国(福井)⑤この車箪笥は寸法が小さめ。金具の先端が、抽象的な曲線の雲形などに抜かれているのが三国の特徴。この金具は通常より厚みがあるものを面取り加工している。外枠は杉で前板は欅。扉を開けると中に隠しの引き出しが。①檜・杉材三ツ分れ時代階段箪笥②幅158×奥行き45×高さ120(㎝)③550,000円④江戸期/庄内(山形)⑤蔵で使われていた、蔵階段と呼ばれる箪笥。上3段、その下の引戸部分、左の2段と三つに分かれる。階段の踏み面には、堅くてしっかりした栗の1枚板が使用されている。
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